有限会社稲垣製作所

インタビュー|日本製のネクタイを作り続けて

お問い合わせはこちら レンタルはこちら

インタビュー|日本製のネクタイを作り続けて

インタビュー|日本製のネクタイを作り続けて

2024/10/01

予期しない出会いが、新たな可能性を拓くことがあります。ある日、X(旧Twitter)に、私が長年集めているネクタイを整理している写真をアップしたところ、反応をくれたのが同じ千代田区にある「成和株式会社」の広報担当の方でした。1935年創業の老舗日本ネクタイメーカーです。ちょうどタイミング良く、原宿で展示会があったため、私はそこにお邪魔して、厚かましくもネクタイの魅力について熱く語ってしまいました。その結果、「Share In」プロジェクトへの参画が決まりました。

稲垣

あの展示会のとき、初対面にもかかわらず、1時間以上もネクタイについて話し込んでしまいましたが…

小野木さん

そうでしたね。私もまだネクタイにそこまで詳しいわけではないのですが、やはり素敵なアイテムなので、もっと多くの人に届けたいと思っているんです。

稲垣

とにかく歴史のある会社さんなので、少し図々しいかもしれませんが、改めて御社についてご説明いただけますでしょうか?

和田さん

弊社は1935年、私の曽祖父にあたる和田全弘が東京・日本橋本石町で三和商廛(さんわしょうてん)を創業したのが始まりです。太平洋戦争後の1945年には、神田司町に三和襟飾産業株式会社を設立し、その後、1955年に発展・改組して現在の成和株式会社となりました。創業以来、ファッションの本質に真摯に向き合い、先人の英知と新しい感覚を融合させた「温故知新」の姿勢を持って、技術力を磨いてきました。そして、人々の心を触発する「感性品質」のネクタイを企画・製造・販売しております。

稲垣

ファッションアイテムの中でも、身に付けるものにはさまざまな種類があると思いますが、なぜネクタイに着目されたのでしょうか?

和田さん

創業当時、「これからは小僧も手代も洋服の時代になり、ネクタイが必需品となるだろう」との予測から、ネクタイの製造販売業を始めたと聞いております。これは、日本の近代化の流れを見据えた決断だったようです。

稲垣

おおよその数で構いませんが、この長い歴史の中で、これまでに何本のネクタイを世に送り出してこられたのでしょうか?

和田さん

正確なデータは残っていないのですが、弊社は創業から89年が経ちます。近年では、日本でクールビズやビジネスカジュアルが普及し、自由な服装が一般的になったことで、生産本数は減少しています。しかし、日本で最もネクタイが売れていた昭和30年代から40年代にかけては、年間100万本以上を生産・販売しておりましたので、ざっくりですが、これまでに数億本のネクタイを世に送り出してきたと考えています。

稲垣

想像以上の数ですね!ネクタイというアイテムは身近に感じられますが、実際にはどのように作られているのか、意外と分からないことも多いと思います。デザインや製造の過程で大変な点について教えていただけますか?

和田さん

デザインに関しては、ネクタイという限られた面積と表現の幅の中で、お客様に使いたいと思っていただけるデザインを落とし込むのが難しいですね。自社工場で生地を織る際には、どのような織り方が美しい柄を生み出せるかを試行錯誤しながら研究しています。

和田さん

製造の観点から見ると、現在弊社ではネクタイの加工をすべて職人さんにお願いしていますが、機械に生地をセットしてボタンを押せば「ポン!」と出てくるような完全な自動化は不可能です。昔に比べれば多少機械の手助けはありますが、それでも大半の工程は人の手で仕上げる必要があります。今後は職人さんの高齢化や減少という問題にも対応していかなければなりません。また、メインの素材である絹糸の繊細さも、工程において大変重要な要素の一つです。

稲垣

店舗だけでなくネット販売も行っていますが、ネクタイの見せ方に関して大変な点はありますか?

小野木さん

ネット販売では、直接手に取ってネクタイを確認していただけないため、弊社のネクタイの魅力である美しい色や質感が伝わりにくいというのが最大の課題だと思っています。同じ青の中でも微妙な違いがあるので、限られた環境下でどのように違いや魅力を伝えていくかを、引き続き学び続けなければならないと感じています。

稲垣

今回、御社のアーカイブのネクタイをご提供いただく形で「Share In」に参画していただくことになりましたが、販売もされている中で、なぜレンタルという業態にご協力いただけたのか、その理由をお聞かせいただけますか?

和田さん

もちろん、弊社のネクタイを購入していただき、さまざまな場面で使っていただけることが一番嬉しいのですが、まずは日本製のネクタイの品質の良さを実際に体験していただける機会を提供できることが重要だと思いました。そして、弊社の資料として存在していたアーカイブがレンタルによって新たに命を吹き込まれることも、大きな理由の一つです。

稲垣

せっかくの機会ですので、現在の御社の新作についてもご紹介いただけますか?

小野木さん

現在、弊社のコレクションとしては、拘り尽くした「ROYTOUCH」というブランド名のネクタイと、季節や流行を楽しむ「KINSHOKU」というネクタイの2本柱で展開しています。

ROYTOUCH

ROYTOUCHでは、生地密度の高さを活かした繊細なメダリオンや、織り目の美しさを楽しめる無地の新作ネクタイをリリースしました。カラーバリエーションも含めて、コレクションの幅はかなり広がってきたと感じています。

KINSHOKU

KINSHOKUでは、春から続けての企画をリリースしています。4月には桜染めの糸を使った桜ネクタイ、5月には京都の西陣の顕紋紗を使った紋紗織ネクタイ、6月には日本で海島綿と呼ばれる貴重なシーアイランドコットンを使ったニットタイもリリースしました。今後も、拘りの詰まったネクタイを皆さまにお届けできるようにしていく予定です。

稲垣

今後、何か一緒にできることがあればお願いしたいと思っていますが、御社で今後やっていきたいことを、言える範囲で教えていただけますか?

小野木さん

ここまでの話にも繋がりますが、弊社は長年ネクタイを作ってきた会社です。だからこそ、私たちには特別な財産があると思っています。アーカイブとしてこれまでに作ってきた柄や培った技術・経験に加えて、弊社と取引先との繋がりも大きな財産だと感じています。そうした繋がりがあるからこそ、KINSHOKUではバラエティ豊かなネクタイコレクションをリリースできていると思っています。今後も稲垣さんを含め、こういったご縁を大切にし、広告の枠を越えて、さまざまな表現やネクタイ作りにチャレンジしていきたいと思っています。

和田さん

現代の日本では、「ネクタイは面倒だし、締めたくない」という声があるのも事実です。しかし、一律にネクタイをしないということではなく、ファッションとしてビジネスの場でもプライベートな場でもネクタイを楽しみたいという人が増えてほしいと考えています。私自身もそうですが、若い世代は子供の頃からクールビズという概念が当たり前になっており、昔のようにネクタイがビジネスにおいて必需品であるという考えが薄れてきていると感じています。そんな時代で育った結果、大人になってから成人式や入社式のために安価なネクタイを購入し、その一本を使い続けている方も私の周りにはいます。そういった方々に、まずは気軽に日本製の高品質なネクタイを手に取ってもらい、「良いネクタイはこんなにも違うものなのか」と実感していただくことが大切だと思います。そして、ネクタイの良さを発信し続けることも弊社の義務だと考えています。

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。